1.名前の由来
正式には『外傷性頚部症候群』と言われています。
命名の由来には諸説ありますが、最初に『ムチ打ち症』の呼び名が使われたのは1914年頃のアメリカです。
戦闘機で急加速した後に、首の痛みや吐き気を訴えるパイロットが多発しました。その原因は、加速時に頭だけが取り残されて首がムチのように反り返ることなのが判明し、E.Hクロー医師が命名しました。
2.発症のメカニズム
交通事故も戦闘機の場合と同様で、追突された瞬間に体が自動車と共に前方へ行きますが、脆弱な首の上に乗った頭は、慣性の法則で取り残されて首がムチのようにしなってしまいます。
首(頸髄)から枝分かれしている末梢神経は、頸椎の後ろ側に出口があります。そのため瞬間的に出口が圧迫され、手のしびれや体の不調が起きることがあります。
3.なぜ、ムチ打ち症は長引くのか?
ムチ打ち症のイメージは『なかなか良くならない』『後遺症に苦しむ』などが一般的です。骨に異常がなくても半年以上良くならない場合もあります。ムチ打ち症が長期化する原因には次のことが挙げられます。
a.心因性 痛みが長引くと、うつ状態になる患者さんいます。うつになると、脳が痛みを増幅して感じてしまいます。痛いと筋肉が緊張し、さらに痛みが増して『痛みのスパイラル』に陥ってしまいます。
こうなると、心療内科でのカウンセリングと投薬を受ける必要があります。
b.ストレートネック
事故の衝撃や痛みのために、首の筋肉が緊張してしまい、本来の首のカーブが消えてストレートになってしまうことがあります。そのため、首のしなやかさがなくなり頭の重み(5~6㎏)をまともに受けて慢性的な肩こりが起きます。
なお、姿勢の悪さから事故以前からストレートティーがある患者さんも長期化しやすい傾向にあります。
c.脳脊髄液減少症
衝突の衝撃で、脳や脊髄を覆っている硬膜にピンホールが開き、そこから脳と脊髄を保護している脳脊髄液が漏れてしまうものです。頭痛・めまい・首の痛み・倦怠感などの不定愁訴が出現します。
診断が難しく、確定診断にはRI脳槽シンチグラフィーが必要です。
d.衝突時のエネルギー 衝突のエネルギー量は、質量×速度で決まります。低速であっても1t前後の自動車が衝突すると、エネルギーは大きくなり、レントゲンには写らない軟部組織がダメージを受けます。
#むち打ち症
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